眠り

 

 

あなたの知らない道

あなたの知らない山

あなたの知らない川

あなたの知らない海

あなたの知らない坂

 

 

僕はそのひとつひとつを

あなたに紹介する

ほらあそこを見てごらん

指さすたびにあなたの目が輝く

ああこんな日が来るなんて

 

 

沈みゆく陽に

あなたの顔が染まる

何度も何度もひとりで見た空

胸を締めつけていた哀しみが

少しずつ少しずつ

溶けていく

 

 

あなたの胸に顔をうずめ

ずっと一緒だと確かめる

ひとりぼっちだった子犬が

こっくりこっくりと船を漕ぐ

はじめてだよ

 

 

うつらうつらしながら

この部屋は寒いでしょと

僕はつぶやく

ううんちっともと

あなたが微笑む

 

 

誰も知らなかった僕の苦しみ

誰も知らなかった僕の孤独

誰も知らなかった僕の愛

もういいんだよね

 

 

あなたがいる

あなたがいるんだ

 

 

街はとても静か

冷たい空気が満ちている

遠くで小さく猫が鳴く

あなたがくすりと笑い

僕は眠りにつく