浅春

 

 

 

それはとても穏やかで

大きな声を出さず

ただただ静かにそこにあって

僕を待っていた

 

 

僕はいつもひとりぼっちで

小さな涙の音を聴き逃し

愛という名のもとに

鎧の中に身を縮めた

 

 

僕は本当にひとりぼっちだった

ひとりはいやだと叫ぶのに

ぬくもりに背を向けて

膝を抱えた

 

 

ただほんの少し

ほんの少しだけ

手を伸ばせばよかったのに

頑な過ぎて動けずにいた

 

 

僕は僕の愛に溺れて

あなたの愛を知らなかった

僕が渇望するものはもう

あなたがくれていたのに

 

 

あなたが背中を向けたとき

やっとわかった

僕は僕の惨めさと悲しみを

あなたの掌に載せた

 

 

甘い香りと冷たい風

人々のざわめき

あなたの笑い声

たなびく髪

 

 

愚かな僕をあなたは撫でる

愚かな僕をあなたは撫でる

やさしくやさしく

いつまでもずっと