檻と思い出

Photo credit: August Brill on VisualHunt

 

 

どこか遠くに僕たちの行く場所があると

言葉もないままにそう思い込んでいた

僕の隣に君がいない今

僕には行くべき場所もない

 

 

 

不自由のせいで酸素が薄い

君の面影だらけで辺りは暗い

僕には行くべき場所はない

僕にはするべきこともない

 

 

 

できることなら

あの東山の檻の中で

右に行ったり左に行ったり

狭い部屋をうろうろして

気が触れたみたいに同じことを繰り返す

そんな風に過ごしていたい

 

 

 

君が来たってもう僕は

気付かないだろう

おこぼれを狙うカラスに突かれて

血を流したまま突っ立っている

君は何も感じない

僕も感じないふりをする

僕たちに思い出はない

 

 

あの頃はあちこち行った

特に花はたくさん見たものだ

一番いいのは風

僕たちは黙って吹かれてた

君の髪が頬に触れるのが

僕は大好きだった

かろうじて憶えている

もうすぐ消えてなくなる

もうとっくに君は忘れている

 

 

 

僕は向こう側を向いている

けっして顔を見られないように

なぜってさっきは

涙が流れちまった

なぜだかはわからない

もうなぜだかはわからないんだ