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遠い昔

旅に出た

ひとりで

 

全力で走ったり

のんびりぶらついたり

じっと居座ったり

誰かと出逢ったりした

 

微笑みを交わしたり

大声で喧嘩したり

感謝されたり

泣かれたりした

 

危ない目に遭ったり

道端で震えたり

海辺の風に吹かれたり

太陽に焼かれたりした

 

 

残していった人たちは

もうどこにもいない

ほんとうは

もうずいぶん前から

いない

 

僕は相変わらず

泥水を飲んでいる

まだ生きてはいるが

疲れてる

 

 

しゃがみ込んだ僕に

蝶がまとわりつく

明るい色に

真っ黒な対照が

僕の目を奪う

 

君が来た日のこと

よく憶えてる

あの日から僕は

いつも君を待ってる

煙草をふかして

表情を変えずに

 

君は花を見つけ

草木に色を与え

美しく舞いながら

僕に語りかける

 

どんなに喪っても

さびしくはないと

それは過去から来て

僕に出逢い

永遠にとどまり続けると

 

半信半疑の僕に

君は耳元で囁く

僕はうっとりして

そっと目を開く

 

 

僕は旅の途中で

間違いばかりをした

君に逢って

それがわかった

 

でも君は言う

何も喪われないと

月を横切る美しい影

いつまでも君は

傍で舞っている

 

旅が終わるまで

君といる