トネリコ

4961391784_811e33717b_z

Photo credit: Nicola since 1972 via Visualhunt.com / CC BY

 

 

あの角からあなたが現れて

足早に息を弾ませ

ドアを開けて微笑んで

嬉しそうにおはようと言う

 

 

幾度となく見た光景なのに

いつも初めてのように

バックミラーを見つめて

僕は待っている

 

 

あなたが姿を見せるたびに

僕は恋をする

窓の外でトネリコが揺れて

眩しさに僕は目を細める

 

 

僕はきっと繰り返すだろう

揺れる髪に

白い肌に

潤んだ瞳に

何よりも

あなたの抱える想いに

あなたの美しさに

気の遠くなるような時を超えても

溜息をつき胸を詰まらせる

 

 

ふたたびトネリコが風にざわめいて

空と緑の境界に目を奪われる

小さな葉の動きに洗われて

僕は呟く

すべては大丈夫だと

 

 

気がつけばミラーに君が映る

僕はまた新しく恋をして

初めて触れるように

その愛しい手に触れる

 

 

僕の隣にはあなたがいて

今ミラーにはトネリコが映る

涼しげな細くまっすぐな枝が

一度だけ大きく揺れて

ふたりを見送っている